カーボンファイバーの雑学

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スチールの原価は約40円/kgに対してカーボンファイバーの原価は3,000~10,000円/kgと非常に高価です。
なぜカーボンファイバーが非常に高いのか理由を解説します。
大きな理由は①原料費が高い、②加工工程が多い、③加工条件が厳しい、です。順番に解説します。

①原料費が高い
炭素繊維の原料となるアクリロニトリルはアクリル繊維の原料となる石油由来の物質ですが、
価格は約200円/kg(2023年4月時点)であり、原料の時点でスチールの原価を大きく上回ります。

②加工工程が多い
アクリロニトリルから炭素繊維にするためには多くの工程(下、(1)-(3))を経る必要があります。
それぞれ、化学的に全く異なる処理であるため、各工程を分断する必要があります。
従って、連続生産ができないため各工程でのロスが多くなってしまいます。
(1)アクリロニトリルをポリアクリロニトリルにする重合工程
(2)ポリアクリロニトリルをアクリル繊維にする紡糸工程
(3)アクリル繊維を熱処理してカーボンファイバーにする焼成工程

③加工条件が厳しい
カーボンファイバーの焼成工程では数千度の高温で熱処理を行います。
高温の熱処理には特別な装置が必要ですし、加熱のための燃料代や電気代が原価に上乗せされます。

カーボンファイバーはアクリル繊維を数千度の高温で黒鉛化した繊維です。
その内部には微細な黒鉛(グラファイト)構造が作られています。
グラファイト構造がカーボンファイバーの強さと軽さの源なのですが、
このグラファイト構造がカーボンファイバーに光沢が見られる原因となります。
グラファイト構造は炭素原子がハチの巣状に配置されたグラフェンシートが積層して構成されます。
炭素の電子配置からグラフェンシート上には自由電子が存在するため、自由電子に光が反射することで光沢が発生します。

Carbrellaではカーボンファイバーを平織りにした布(クロス)を使用しました。
なぜクロスにしたカーボンファイバーを使用したのでしょうか。
カーボンファイバーは一般的な繊維と同じように繊維方向の引張には非常に強い一方で、
繊維と垂直方向の耐久性はほとんどありません。
従って、カーボンファイバーのみを用いて丈夫な構造を作るためには色々な角度に繊維の向きを配置する必要があります。
そこで、最も簡単な方法としてカーボンファイバーでクロスを作製して使用します。
カーボンファイバーを直角に配置することであらゆる方向への耐久性を確保することができます。

2021年におけるカーボンファイバーの世界シェアは1位東レ(10.2%)、2位帝人(9.6%)、3位三菱ケミカル(9.5%)と上位3社(合計30%程度)を日本企業が占めています。しかし、近年、中国企業の技術向上が著しく、中国企業が上位企業にランクインする日も遠くないかもしれません。

カーボンファイバーの比重は約1.8、アルミニウムは約2.7、鉄は約7.8です。
つまり、炭素繊維は、鉄の1/4程度の重さで、アルミニウムよりも軽い物質です。
炭素繊維は、なぜそんなに軽いのでしょうか?1つ目の理由は、構成元素の違いです。
炭素繊維は、99%以上が炭素でできています。炭素は、金属元素よりも原子量が小さいため、その分比重も軽くなっています。
炭素の原子量は約12で、鉄は約56ですから、ほとんど炭素でできた素材なら、金属よりも軽くなります。

もう1つの理由が、グラファイト構造です。
金属結合は原子同士がすぐ近くに並んでいますが、炭素繊維は、グラファイト構造という、炭素が蜂の巣状の炭素が何層も重なった構造を持っています。
そして、この層と層とは分子間力で結合しており、層の間にはかなり距離があります。
その距離は0.34nmほどで、これは、リチウム原子1つがすっぽり入るくらいの大きな隙間です。
層と層との間にこれだけ大きな隙間が空いているため、密接に結合している金属よりも比重が小さくなります。

カーボンファイバーは約10umの繊維が数千本から数万本の束になったものです。
髪の毛の太さが大体50-100umなので髪の毛の1/5-1/10と髪の毛よりもとても細い繊維です。
繊維が細くなることで、繊維の表面積が減少します。表面積が減少すると繊維が壊れる原因となる傷が付きにくくなるため強度が上がりやすくなります。
繊維が細いこともカーボンファイバーの強度向上に貢献しているのですね。

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